WordPressでのECサイト運用デメリット

セキュリティリスクが高い

WordPressでECサイトを運用する際の主なデメリットとして、以下の点が挙げられます。

WordPressは世界中で広く利用されているため、ハッカーの標的になりやすいという側面があります。特にECサイトでは顧客の個人情報や決済情報といった機密性の高いデータを扱うため、セキュリティ対策が非常に重要になります。

  • 自己責任での対策が必要: サーバー管理やセキュリティ対策(SSL証明書の導入、セキュリティプラグインの活用、WAFの設定など)をすべて自己責任で行う必要があり、専門的な知識が求められます。
  • 脆弱性の懸念: プラグインやテーマが適切に更新されていない場合や、品質にバラつきがあるプラグインを使用していると、そこからセキュリティホールが生じ、ハッキングやデータ漏洩のリスクが高まります。

決済方法の選択肢が少ない・新しい決済への対応が遅れる

WordPressのEC機能(プラグインなど)を利用する場合、デフォルトで対応している決済方法が、EC専用のASPやパッケージに比べて少ないことがあります。

  • プラグイン依存: 決済方法は基本的に導入するプラグインに依存するため、Amazon PayやPaidy決済、サブスクリプション支払いなど、ターゲット層に合わせた多様な決済手段を追加することが難しい場合があります。
  • 機会損失のリスク: 新しい決済方法への対応が遅れると、顧客の利便性を損ない、購入機会の損失につながる可能性があります。

カスタマイズ・拡張性・保守に専門知識が必要

WordPressはカスタマイズの自由度が高い反面、細かい設定や大規模なサイト、複雑な機能の実装には専門的なスキルが求められます。

  • エラー発生のリスク: テーマやプラグインの組み合わせ(相性)によって予期せぬエラーや不具合が発生することがあり、その解決にはデバッグの知識が必要です。
  • パフォーマンスの低下: 大量のプラグインを導入したり、サイトの規模が大きくなったりすると、サイトの表示速度が遅くなるなど、パフォーマンスの問題が生じやすくなります。
  • メンテナンスの負担: WordPress本体、テーマ、プラグインは頻繁にアップデートが必要であり、これを怠るとセキュリティリスクが高まる上に、アップデート時に互換性の問題でサイトが正常に動作しなくなるリスクもあります。

ECとしての最適化がしにくい場合がある

WordPressは元々ブログやWebサイト構築のためのCMSであるため、ECサイトとして売上を最大化するための機能や施策を行うのに、専用のECプラットフォームに比べて制約がある場合があります。

  • マーケティング連携: 外部のECモールやSNSとの連携、高度な在庫管理、顧客分析などのEC特有の機能を実装するために、難しいカスタマイズが必要になることがあります。

これらのデメリットを踏まえ、小規模から始める場合やブログとECを一体化したい場合はWordPressも有力な選択肢ですが、高いセキュリティ基準や大規模な取引、多機能性を求める場合は、EC専用のASP(Shopify、BASE、STORESなど)やパッケージシステムの利用も検討することをおすすめします。

ECサイトの規模とWordPressの対応

WordPressは、拡張性が高く、小規模から大規模なECサイトまで幅広く対応できる可能性があります。

  • 小規模なECサイト
    • 特徴: 商品点数が少ない、月間の取引数が比較的少ない、個人事業主やスタートアップなど。
    • 対応: 最も得意とする規模です。無料のプラグイン(WooCommerceなど)を利用して、低コストで迅速に立ち上げることが可能です。シンプルな機能で十分な場合は、無料プランで対応できる場合も多いようです。
  • 中規模なECサイト
    • 特徴: 商品点数が数百~数千点、ある程度のアクセスや取引がある、企業や成長段階のビジネスなど。
    • 対応: 外部サービスとの連携、サーバーの強化、有料テーマやプラグインの導入、カスタマイズなどを行うことで対応可能です。信頼性の高いホスティングサービスを選ぶことが重要になります。
  • 大規模なECサイト
    • 特徴: 商品点数が多い、非常に高いアクセスや取引がある、年商数十億円以上の企業など。
    • 対応: 高度なカスタマイズや専用のシステム開発が必要になるケースが多いです。WordPress単体ではなく、「ヘッドレスCMS」としてWordPressを活用し、フロントエンド(ユーザーに見える部分)は別の技術で構築する、あるいは専用の大規模ECプラットフォーム(例:Shopify Plus、または国内のECパッケージ)の方が適している場合もあります。
    • ただし、年商100億円規模のECサイトの構築を想定したWordPressテーマも存在するなど、高い技術力と適切なサーバー環境があれば大規模な運用実績も出ています。

規模を決定づける主な要因

WordPressでECサイトを運用する際の「規模」の限界は、主に以下の要因によって決まります。

  1. 商品点数とデータ量: データベースの負荷に直結します。
  2. トラフィック(アクセス数): 大量のアクセスを捌けるサーバーの性能が必要です。
  3. トランザクション(取引数): 決済処理の安定性と速度が重要になります。
  4. 必要な機能の複雑性: 複雑な在庫管理、B2B機能、多言語対応などが求められると、プラグインやカスタマイズの難易度とコストが上がります。

まとめ

WordPressは、特に中小規模のECサイトにおいて、最もポピュラーで強力な選択肢の一つです。

  • まずはスモールスタートしたい、予算を抑えたい場合: WordPressとWooCommerce(や類似のECプラグイン)は非常に強力です。
  • 将来的に大幅な規模拡大が見込まれる場合: サイト立ち上げ時からのサーバー選定や、スケーラビリティを考慮した設計が特に重要になります。

WordPressでのECサイト構築方法

WordPressでECサイトを運用するために必要なことは、大きく分けてサイト構築の基礎、ECサイト特有の必須機能、そして運用・管理面の3点があります。

1. サイト構築の基礎

ECサイトに限らず、WordPressでウェブサイトを公開するために必要な基本的な要素です。

  • ドメインの取得: サイトのアドレス(例: example.com)を取得します。
  • レンタルサーバーの契約: WordPressとサイトのデータを格納する場所を確保します。
  • WordPressのインストールと設定: サーバーにWordPressを導入し、基本的な設定を行います。
  • ECサイト向けテーマの選択: 商品の表示や購入フローに適したデザインテーマを選び、インストールします。

2. ECサイト特有の必須機能(プラグインまたは外部連携)

WordPressはデフォルトではEC機能を持たないため、以下の機能をプラグイン(例:WooCommerce、Welcartなど)で追加するか、外部のECシステムと連携させる必要があります。

必須の機能

機能概要
カートシステムユーザーが商品を選び、購入するまでの一連の流れ(買い物かご、数量変更など)を実現する機能です。
決済システムクレジットカード決済、銀行振込、代金引換、電子マネーなど、多様な支払い方法を安全に提供する機能です。
商品管理システム商品情報の登録、在庫管理、価格設定などを行う機能です。

管理・運用に不可欠な機能

機能概要
顧客情報管理会員情報、購入履歴、配送先情報などを安全に管理する機能です。
売上管理システム注文状況、売上、集計などを確認・分析する機能です。
配送・送料設定商品の重さや配送地域に基づいた送料計算、配送方法の設定を行う機能です。
マーケティング機能クーポン発行、メールマガジン、SEO対策など、集客や販売促進のための機能です。
カスタマーサポート機能問い合わせフォーム、FAQ、チャットサポートなど、ユーザーサポートのための機能です。

3. 運用・管理面で特に重要なこと

ECサイトでは個人情報や決済情報を取り扱うため、特にセキュリティとメンテナンスが重要になります。

  • セキュリティシステムの強化:
    • SSL/TLSの導入(常時HTTPS化): 通信の暗号化は必須です。
    • セキュリティプラグインの導入: 不正アクセスや改ざんからサイトを守ります。
    • 常時最新バージョンへのアップデート: WordPress本体、テーマ、プラグインを常に最新の状態に保ち、脆弱性対策を行います。
  • バックアップ体制: 万が一のデータ破損やサーバー障害に備え、定期的にサイト全体のデータをバックアップする仕組みが必要です。
  • 法律・規約への対応:
    • 特定商取引法に基づく表記: 事業者の情報や返品・交換の条件などを明記する必要があります。
    • プライバシーポリシー: 取得する個人情報の利用目的や管理方法を明記します。

WordPressでECサイトを構築する2つの方法

  1. ECプラグインの利用:
    • 特徴: WordPress内で全て完結し、カスタマイズの自由度が高いです。初期費用を抑えやすい傾向があります。
    • 主に使われるプラグイン: WooCommerce(世界的に高機能)、Welcart(国内向け機能が充実)
    • 留意点: セキュリティや保守管理を自分で行う必要があります。
  2. 外部ECシステムとの連携:
    • 特徴: EC機能(カート・決済・管理)は専門のASPサービス(例: カラーミーショップ、Shopifyなど)に任せ、WordPressはブログやコンテンツマーケティングに特化して利用します。
    • 留意点: EC機能は専門システムに依存するため、WordPress側のカスタマイズに制約が出る場合があります。

ECサイトの規模や取り扱う商品、ご自身の技術的なスキルによって、最適な構築方法や必要な機能の範囲は変わってきます。

インターネットビジネスは、インターネットやIT技術を活用して商品やサービスを提供し、収益を得るビジネス全般を指します。企業の規模に関わらず、非常に多岐にわたる活動が含まれます。
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