YouTubeマーケティングが成果を出しにくい企業の特徴

目次
YouTubeマーケティングが向かない企業の特徴
YouTubeマーケティングが「向かない」というよりも、効果を出すのが難しい、あるいは向いているとは言えない企業やケースには、いくつか共通する特徴があります。
1. 扱う商材が動画と相性が悪い
- 極度にニッチで、ターゲット層が非常に少ない商材:
- 視聴者が限られすぎていて、YouTubeの広大なプラットフォームを活用するメリットが少ない場合があります。
- 動画で魅力を伝えにくい商材:
- 例えば、ごく一般的な消耗品や、企業の信用度・財務状況などが主な価値となるような、視覚的な要素やエンターテイメント性が低い商材は、動画コンテンツとして面白くするのが難しい場合があります。
2. 運用リソースが不足している
- 制作体制が整っていない企業:
- YouTubeマーケティングは、企画、撮影、編集、アップロード、分析、改善といった多くの工程を、継続的かつ高い頻度で行う必要があります。片手間や一時的な対応では、成果を出す前に頓挫してしまいます。
- 動画制作のノウハウ・知見がない企業:
- 視聴者に「見たい」と思わせる企画力や、最後まで見てもらうための編集スキルが不足していると、ただの宣伝動画になりがちです。
3. 短期的な成果を強く求めすぎる
- すぐに売上や問い合わせに直結することを期待する企業:
- YouTubeは、顧客との信頼関係の構築やブランディング、潜在顧客の育成に向いています。成果が出るまでには数ヶ月〜年単位の時間がかかるのが一般的で、短期的な効果を求めるマーケティング手法とは言えません。
4. 視聴者目線ではなく「企業目線」の動画制作にこだわる
- PR・宣伝ばかりの動画を作る企業:
- 企業が「伝えたいこと」と、視聴者が「知りたいこと」にはギャップがあります。宣伝色が強すぎたり、専門的すぎたり、内輪ネタに終始したりする動画は、視聴者に敬遠され、再生数が伸びません。
要するに、継続的なリソース投入が難しく、かつ動画という媒体を通じて視聴者の興味を引きつけるコンテンツが作れない企業は、YouTubeマーケティングでの成功が難しいと言えます。
どのような業種であっても、コンテンツの企画力や運用体制を整えれば成功の可能性はありますが、まずは上記の点について自社の状況を見極めることが重要です。
YouTubeマーケティング成功企業事例
YouTubeマーケティングで成功している企業は多岐にわたりますが、いくつか注目すべき事例をご紹介します。成功している企業は、それぞれ独自の戦略で視聴者の関心を引きつけています。
特に多くのメディアで取り上げられている成功事例には、以下のような企業があります。
1. トヨタ自動車(トヨタイムズ)
- 特徴: 企業としての情報発信を、ニュース番組のようなオウンドメディア形式(トヨタイムズ)で行っています。
- 成功要因:
- 単なる製品紹介にとどまらず、経営層の考えや会社の取り組み、社会的なテーマなどを深く掘り下げて発信することで、企業の信頼性とブランドイメージを高めています。
- ジャーナリスティックな視点を取り入れ、幅広い層にアピールしています。
2. 北欧、暮らしの道具店(株式会社クラシコム)
- 特徴: ECサイトを運営する企業ですが、YouTubeチャンネルでは商品の紹介よりもライフスタイルや暮らしのヒントに焦点を当てたVlog風の動画を制作しています。
- 成功要因:
- 視聴者に「こんな暮らしがしたい」と思わせるような、共感性の高いコンテンツを提供し、商品の魅力を間接的に伝えています。
- 商品の使用シーンを自然に見せることで、押し付けがましさのない集客を実現し、ECサイトへの流入を増やしています。
3. ルイ・ヴィトン
- 特徴: ファッションブランドとして、ブランドの世界観を伝える動画を制作しています。
- 成功要因:
- 職人が製品を工場で作る様子など、普段見ることのできない製造の裏側を公開することで、商品の価値と企業の信頼性を高めています。
- 高い品質とブランドストーリーを視覚的に伝えることに成功しています。
4. 株式会社バンダイ
- 特徴: 人気YouTuber(はじめしゃちょーなど)とタイアップし、製品を面白おかしく紹介する動画を配信しています。
- 成功要因:
- ターゲット層(この事例では小学生など)に人気のあるインフルエンサーを起用することで、効果的なリーチと高いエンゲージメントを獲得しています。
- 製品の楽しさや魅力を、ターゲットに合った表現で伝えています。
その他の成功事例
- サントリー公式チャンネル: Vtuber(燦鳥ノム)など、トレンドを活用したエンターテイメント性の高いコンテンツで、幅広い層にブランドメッセージを伝えています。
- 本田技研工業株式会社 (Honda): クルマやバイクの紹介だけでなく、企業CM、企業ヒストリー、テクノロジーなど多岐にわたるジャンルの動画を配信し、熱心なファン層を獲得しています。
- 丸亀製麺: コネクテッドTVを活用したYouTube広告で、子育て世代に特化して訴求するなど、広告戦略で成功を収めています。
成功のポイント
これらの成功事例から共通して言えるのは、以下の点です。
- ターゲットに合ったコンテンツ: 誰に見てほしいかを明確にし、その視聴者が「見たい」と思う内容を、彼らが好む形式で提供している。
- ブランドの一貫性: チャンネル全体を通して、企業のブランドメッセージや世界観が一貫している。
- エンゲージメントの創出: 視聴者にとって価値ある情報や、感動、笑いといった感情を呼び起こすことで、高いエンゲージメント(チャンネル登録、コメント、高評価)を生み出している。
- YouTubeに最適化された表現: テレビCMの再利用ではなく、YouTubeというプラットフォームの特性(長尺動画、ライブ配信、ショート動画、コラボなど)を活かした企画を実施している。
BtoB企業のYouTubeマーケティング事例
BtoB企業のYouTubeマーケティングの成功事例は多岐にわたり、認知拡大からリード獲得、技術力のPRまで様々な目的で活用されています。
主な成功事例と、それぞれの企業がどのようなコンテンツを発信しているかをまとめます。
1. 認知拡大とブランディングに成功している事例
| 企業名 | チャンネル名・主な事業内容 | コンテンツの特徴 |
| Sky株式会社 | 「Sky株式会社 公式チャンネル」(各種ITソリューション) | 登録者数5万人超、累計再生回数7,800万回超(※事例記事時点)。中村勘九郎さん出演のCMメイキングや、QuizKnockとのコラボなど、エンタメ性の高いコンテンツを多数投稿し、親しみやすいブランドイメージを構築しています。 |
| 株式会社テラスカイ | 「TerraSkyTV with 厚切りジェイソン」(クラウドビジネス) | 執行役員の厚切りジェイソン氏がMCを務め、最先端テクノロジーからキャリア論まで幅広いビジネスコンテンツを発信。タレント性を活用したユニークな切り口で、企業の思想(Thought Leadership)と認知度を高めています。 |
2. 製品・ソリューションの紹介と導入事例に注力している事例
| 企業名 | 主な事業内容 | コンテンツの特徴 |
| Sansan株式会社 | 名刺管理・営業DX推進 | テレビCM動画に加え、自社主催のアワード受賞企業紹介や、大企業・官公庁・自治体などでの導入事例紹介を掲載。具体的な成果を見せることで、サービスへの信頼性を高めています。 |
| Chatwork | ビジネス向けチャットツール | ツールの基本的な使い方を解説する動画や、コーポレートブランドムービーなどを掲載。ユーザーサポートの役割も兼ねることで、顧客満足度向上や定着化に貢献しています。 |
| freee株式会社 | クラウド会計ソフト | 主に動画広告やYouTube広告として活用し、「小規模事業者向け」という認知を覆し、中堅規模の企業でも利用できるという機能的なメリットを訴求するシナリオで展開しています。 |
3. 技術力や専門知識の発信に特化している事例(製造業・専門職など)
| 企業名 | 主な事業内容 | コンテンツの特徴 |
| 株式会社村田製作所 | 大手電子部品メーカー | PR動画や製品紹介動画に加え、AGV(無人搬送車)などに最適なバッテリーモジュールなど、具体的な製品の技術を紹介。技術力の高さを伝えるコンテンツが中心です。 |
| 武田金型製作所 | 金型の設計・製作 | 金型の加工風景や社員インタビューなどを公開し、職人の技術力や企業の雰囲気を伝えています。自社の技術力を示すために製作した金属(マジックメタル)の紹介動画なども投稿しています。 |
| アルビテクノロジー | 工作機械代理販売・コンサルティング | 主力製品であるCADCAMソフトウェア「HyperMILL」の機能や使い方に関する動画をメインに投稿し、製品ユーザーへの教育・サポートを提供しています。 |
| 株式会社カケハシ | 薬局DXサービス「Musubi」 | 薬剤師の業務効率化に貢献するサービスの紹介動画で、「薬歴残業」といった業界の課題を解決する価値を明確に説明しています。 |
BtoB企業のYouTube活用は、単なるPRだけでなく、「ターゲット層の抱える課題を解決するノウハウの提供」や「製品や技術の具体的なイメージをわかりやすく伝えること」に重点を置く傾向があります。
YouTubeインフルエンサーマーケティングの事例
YouTubeにおけるインフルエンサーマーケティングの成功事例は多数あります。主な事例とそのポイントをいくつかご紹介します。
1. 商品レビュー・体験型コラボ
- 事例:カズチャンネル × 京セラ(セラミックフライパン)
- 概要: 人気YouTuberのカズさんが、京セラのセラミックフライパンを使って実際に料理をする動画。
- ポイント:
- 商品の実用性を視聴者に分かりやすく提示。
- YouTuberの親しみやすいキャラクターと自然なレビューが、視聴者に商品の魅力を伝えるのに貢献。
- 事例:Lunaさん × エマ・スリープ(マットレス)
- 概要: ルーティーン動画やVlogを発信するインフルエンサーが、最先端のスリープテクノロジーを持つマットレスを紹介。
- ポイント:
- インフルエンサーの日常やライフスタイルに商品を溶け込ませて紹介することで、視聴者が自分事としてイメージしやすい。
- ターゲット層の親和性の高いチャンネルを選定(例:生活系Vloggerと寝具)。
2. 嗜好品・特定ジャンルの親和性を活かしたコラボ
- 事例:気まぐれクック × アサヒビール株式会社
- 概要: 料理系YouTuberの気まぐれクックさんが、アサヒビールの商品とコラボ。
- ポイント:
- YouTuberがすでにその商品を愛用していたため、動画に説得力とリアリティが増し、ファンからの共感を得やすい。
- 「食べる・飲む」という体験を通して商品の魅力を最大限に引き出す。
3. 高い集客力とROI(投資収益率)を実現した事例
- 事例:エガちゃんねる × ワンダーステーキ
- 概要: エガちゃんねるで、ワンダーステーキのECサイトや店舗を告知。
- ポイント:
- 高いエンタメ性を持つコンテンツで、多くの視聴者にリーチ。
- ECサイトの宣伝や店舗への集客に大きく貢献し、高いROIを達成。
4. ブランド認知・ファン層に合わせた戦略
- 事例:はじめしゃちょー × 株式会社バンダイ
- 概要: はじめしゃちょーがバンダイの製品を面白おかしく紹介する動画。
- ポイント:
- ターゲット層(小学生など)に絶大な人気を持つYouTuberを起用し、効果的なリーチを実現。
- エンタメ性の高い動画で商品の認知を拡大。
- 事例:GU × 複数YouTuber(ファッション系)
- 概要: 複数のファッション系YouTuberがGUの商品を紹介するコラボ動画。
- ポイント:
- 複数のインフルエンサーを起用することで、それぞれのフォロワー層に届き、爆発的な拡散力を生み出す。
- 動画コンテンツのエンタメ性を高め、ブランドの認知拡大に繋げる。
成功の共通するポイント
YouTubeのインフルエンサーマーケティングを成功させるには、以下の点が重要です。
- ブランドとインフルエンサーの親和性: 企業の商品やサービスと、YouTuberのチャンネルテーマや視聴者層が合致していること。
- 自然な紹介: 広告っぽさを抑え、YouTuberの個性を活かした自然な形で商品を紹介すること。
- 信頼性: YouTuberが心から商品を良いと思っていることが伝わることで、視聴者の信頼と購買意欲に繋がる。
これらの事例を参考に、貴社のマーケティング戦略に合ったYouTuberや企画を検討してみてはいかがでしょうか。




